古生物学勉強法−古生物の部屋

古生物学勉強法

1.はじめに

世の中には化石や生物の進化などについて学びたいと思っているが,どうしていいかわからない人が多いであろう.事実,このホームページを見てどうすればいいかというメールをくれる方々がいる.そういった方々は概して若い人でこれから大学に行こうとしているか,もしくは大学院の選択で迷っている方々だ.

ここでは,そんな人たちに少しでも役に立てばと思い,古生物学を勉強する方法について書いてみた.

とは言え,私自身はまだ常勤職への就職をしていないので,そんなに偉そうなことは言えない.もしかすると,ここに書いたことよりももっといい道ががあるかもしれない.そんな道を見つけたら,是非このページに寄稿してください.連絡はこちらまで.

2.知識として古生物学を学びたい人へ

古生物の研究をしたいという訳ではないが,古生物に興味があって古生物学について学びたい人にはなかなかおすすめの大学はない.古生物に特化した学部は皆無に等しく,大抵は地質学教室や生物学教室の中で古生物学が扱われているのみである.しかし,古生物学を学ぶ上では地質学や生物学の知識が絶対に必要なので,これらの学部で幅広い知識を身につけるとよいだろう.

その上で,4年生で行う卒業研究がおもしろいところに行った方がよい.外から見ているだけだが,静岡大学や高知大学,愛媛大学なんかはおもしろそうな気がする(私の興味による独断と偏見ですが).

研究よりむしろ人に古生物の魅力を伝える仕事に就きたい人は,教育大に行くと良いと思う.教育大には大抵理科教育という分野があって,その中に地学教育が入っているのが通常である.このようなところでは研究内容も化石をいかに授業に生かすか?といったテーマも存在する.一考の余地がある.

3.古脊椎動物を学びたい人へ

古生物学を学びたいと言う人の大半が古脊椎動物,特に恐竜を研究したいという人である.これを希望する人は本当に多い!

恐竜は確かに格好良くて,魅力のある古生物である.しかし,恐竜を好きなことと恐竜を研究することとは大きく異なる.この違いをきちんと認識した上で,恐竜研究者を目指して欲しい.そして,古脊椎動物学(特に恐竜)で研究者となるのは非常に困難な道であることを覚悟した上で,この進路に進んで欲しい.

重要なことは,とにかく早い段階で海外へ行く必要があることだ!

というのも,日本では古脊椎動物を研究できるところは本当に少ない.一応京都大学では古脊椎の先生方がおられるが,それ以外でははっきり言ってできない.しかも古脊椎動物を研究する上で非常に重要なことはサンプルの手に入りやすさであるが,日本では恐竜はほとんどでない上に,非常に数がすくなく,断片的な情報しか手に入らない.

さっさとアメリカに行って学んだ方が良いであろう.といっても,英語もできず,古生物の知識も無くてはどうしようもないと思うかもしれないが,英語なんてものは向こうに住めばすぐにしゃべれるものだと思う(たぶん).古生物の知識も向こうで身につければ良いであろう.

学部ぐらいは日本でもいいかもしれないが,最低でも院からは向こうに行った方が良いであろう.

4.古脊椎以外の古生物学を学びたい人へ

古脊椎以外の古生物学を学びたい人は日本国内にいくつもの大学院がある.もちろん海外を経験しておくことはよいことだと思うが,日本国内でも十分に研究できる.

日本で古生物学を研究できるところについては,「古生物学を学べる大学」にまとめているので参考にして欲しい.

注意するべきことは,先生の教育方針や研究室で選択できるテーマと自分が研究したいテーマが合致するかどうかである.あらかじめ研究室所属の先生学生に話を聞きに行くと良いであろう.

大学院で修士や博士課程に進もうとしている人は,良く考えた方が良い.古生物という分野は産業などには結びつきがほとんど無く,就職先は研究者に限られていると行っても過言ではない.しかも,研究職は非常に数が少なく,就職できない人もいる.就職できる人でも30過ぎまで就職できない人が多い.かく言う私は現在30歳であるが,就職先はまだない.つまり,本当に古生物学や研究が好きで,お金がなくとも研究を続けたいという意志がないとつとまらないのだ.

さて,本当に好きで好きでたまらないという人はどうすれば良いか?

まずは,自分がどういう人間なのかを見極めよう.とりあえず学部は古生物系であれば,ある程度どこでも良い.ただし,ちゃんと地質学,もしくは生物学を教えてくれるところを選んだ方がよい.それで,院をどこにするかをきちんと見極めよう.指導教官との結びつきは学部とは比べものにならないくらい強くなるので,相性が合わなかったり,自分の行うテーマに関して理解がないとどうしようもない.

また,自分の能力として,というか性格として分析,実験系なのかフィールド系なのか,両方できるのかはちゃんと自己判断して,それとともにやりたい分野,分類群をいろんな人と相談しながら決めていけば良いと思います.

研究って言うのは好きでないとできないし,これが面白い!というのを見いだせないと,後々やっていけなくなる.

さて,それで古生物学を学ぶ上で,まず,地質学と生物学の知識を身につけることをおすすめします.というのも古生物学の分野は主として化石を扱うわけですが(扱わない場合もある),それは地層中から出てくるわけで,地質学を知らずして化石を語るわけにはいかないのです.

また,化石は当然生物な訳ですから,生物学の知識も必須です.これらの知識に加えて古生物学を学ぶことによって,過去の生物の遺骸である化石から進化や古生態などについての議論ができるようになります.

そういったことをきちんと学べて,なおかつ自分の研究したい研究室を選ぶのが最善です.

そういうのを相談するのは院生が最適だと思いますが,自分には知り合いがいないという人は,まあ私に相談してもいいですが,私以外の人からも話を聞いた方がいいので,古生物学会の懇親会などに出て,無理矢理知り合いを作っていろんな人の話を聞いたらいいと思います.

是非頑張ってください.

5.学生以外で古生物を学びたい人へ

すでに社会人になっているが,古生物学について改めて勉強してみたいという人も結構いると思いますが,社会人入学まではしたくないという人はどうすればよいでしょうか?

これは学生にも共通するのですが,いくつかの方法があります.

  • 本からの知識
  • 大学の授業を聴講する
  • 博物館に行く

誰でも思いつくかもしれませんが,この3点を抑えればある程度は勉強できます.

本に関して言えば,「古生物の科学」というシリーズが(全5巻)出ており,かなり勉強になります.とは言え,かなり値段が高い(1冊1万円以上もする)ので,北里先生の「地球生物学」かラウプ&スタンレーの「古生物学の基礎」(どうぶつ社)を最初に読むことをおすすめする.本については古生物関連の書籍紹介でまとめていますので参考にしてください.

もっと一般的な大量絶滅などの話については,例えば「生命と地球の共進化」(NHKブックス)などの本が読みやすいし,良くまとまっていると思います.

大学の授業に関しては,結構だれでも聴講できるものです.潜りではいるのは難しいですので,ちゃんと大学に聴講生の申請をして,1授業あたり(半期あたり)13時間くらいで,4万円ぐらいです.これで古生物に関連するような授業を取ったらいいかもしれません.

ただし,大学の授業は普通平日にやりますので,おつとめの人は難しいかもしれないですね.

博物館に行くという方法は非常に有益です.博物館にもよりますが,解説なども書いてあるし,何より実物の化石を見ることができます.また,わからない点などがあれば,どんどん質問に行ってみましょう(ただし,ある程度は自分で調べてからね).こういう質問などを繰り返して,博物館の学芸員の人たちと仲良くなってきたらもうけものです.調査などにも一緒に連れて行ってくれるかもしれません.

6.おわりに

いろいろ書きましたが,参考になりましたでしょうか.何にせよ,化石が好きだ,研究が面白いと思えればそれで良いと思います.すべてはそこから始まります.

あとはいろいろアドバイスをくれる人を見つけましょう.そうすれば自ずと道は開けてきます.

それでは,古生物学の世界に浸れるように頑張ってください.