群集とは何か?
はじめに
化石を研究していると,「群集」という言葉を良く耳にする.これは化石に限ったことではなく,現生の研究でも良く耳にする言葉である.しかし,現生で使う意味と化石での意味とでは,若干の違いがあるように思う.
ここでは,「群集」とはいったい何か?そして,群集を取り囲む生態系についてまとめてみよう.
群集の意味,使われ方
群集という言葉は,実は二つの意味がある.英語で言う[assemblage]と[community]である.この2つの単語は,それぞれ異なる意味を持っているのだが,日本語ではどちらも「群集」と訳されている.
[community]
この言葉が普通の群集の意味です.特に現生では,群集といったらこの意味を指すことが普通です.これは,生物個体が相互作用している集団のことを言います.規模はピンキリです.生態系の生物の部分を群集と呼ぶときもあります.
[assemblage]
生物の単なる集合で,その生物同士はお互いに相互作用がない,もしくはわからない場合に使用します.例えば,古生物の場合は,単純に死んでから集積した場合もあるので,それらがお互いに同所的に住んでいたのかわからない場合が多いでしょう.このような場合は,assemblageを使用します.
以上の様な用語は,非常に重要で,特に生物の相互作用,例えば被食・捕食などを古生物学で行う場合は,上記の意味を適切に理解する必要があるでしょう.
生態系について
では,「生態系」はどこまでの範囲でしょうか? 生態系は,生物の相互作用の他に,物質・エネルギーの循環,移動までも視野にいれた言葉です.
現生では,非常に多くの研究がありますが,化石で生態系を復元した例は皆無でしょう.何より,一次生産者の情報がほとんど研究されていないのです.今後は,地層中に残っている有機物(バイオマーカー)から,過去の一次生産者を含めた古生態系の復元がなされていくことでしょう.