アンモナイトの系統
制作協力者:吉岡由紀さん
1.はじめに
掲示板でアンモナイトの系統関係について質問があったので,一度まとめてみようと思ってこのページを作成しました.
一口にアンモナイトと言ってもいろいろな意味(定義)があります.普通僕らがアンモナイトと言っているのは,実はシルル紀末にオウムガイの仲間から別れたグループで,アンモナイトの他にゴニアタイトやセラタイトと言った古生代から三畳紀にかけて栄えたグループも入ります.
それではどこからアンモナイトと正式に言うかといいますと,アンモナイト目に入るもの,中でもアンモナイト亜目の中に入るものを狭義のアンモナイトと言っています.
うーーん,わかりにくくなってきました.生物の分類は界・門・綱・目・科・属・種という風に分けられますが,アンモナイト目は動物界・軟体動物門・頭足綱に属していて,この頭足綱にはアンモナイト目だけではなくて,イカやタコ,オウムガイも入っています.それで,これと同列にいわゆるアンモナイトと呼んでいるアンモナイト目,ゴニアタイト目,セラタイト目が入っています.
これでわかりましたかね?
それで,アンモナイト目は主にジュラ紀と白亜紀にいるのですが,この中をさらに4つの亜目に分けます.その4つとは,アンモナイト亜目,フィロセラス亜目,リトセラス亜目,アンキロセラス亜目です.
アンモナイト亜目には,デスモセラスやアカントセラスなどが含まれていて,フィロセラス亜目にはフィロセラス,リトセラス亜目にはゴードリセラスやテトラゴニーテス,アンキロセラス亜目には異常巻きアンモナイトが入ります.
今回ここに書くのは,このアンモナイト亜目の系統についてです.このアンモナイト亜目がいったいどのグループから別れてきたものなのか?それは未だに解決してない問題です.
2.アンモナイト亜目の系統に関する諸説
さて,では本題に入りましょう.
アンモナイト亜目の系統に関してはこれまで何人もの人が仮説を提唱しています.代表的なもので,3つの説があります. 一つずつ見ていきましょう.
2−1.Arkell et al. (1957)の説
Treatise(トリーティーズ)というアンモナイトの図鑑の大御所だね.これに出されたものです.
図がでっかいです.気にしないでください.緑で囲ってあるのがアンモナイト亜目に分類されているところですが,実は,ここではリトセラス亜目からきたものと,フィロセラス亜目からきたものが一緒になって分類されています. こういう状態を多系統と呼んでいるのですが,別々の先祖からきたものをまとめるのはなんか変だと思いませんか?
2−2.Wright (1981)の説
これは,Wright (1981)とDonovan et al. (1981)を合わせたものです. 図をクリックすると巨大な図がでてきます.どうしても細かい字を読みたい人はクリックしてください.
この説では,アンモナイト亜目がどこからきたのかわからないのです.つまり,リトセラス亜目からきたのか?それともフィロセラス亜目からきたのか,全然わかっていないのです.
2−3.Page (1996)の説
最近の説です.
ここでは,アンモナイト亜目がこれまでのものから縮小されて,アンモナイト亜目とペリスフィンクタス亜目の2つに分けられました.それはそれでよいとして,アンモナイト亜目(オレンジ)はフィロセラス亜目(青)から派生していますが,アンモナイト亜目のなかにリトセラス亜目が入ってしまっています.これも少し変な話なのです.
3.おわりに
さて,以上のような3つの説を紹介しましたが,一番最近のものでも厳密にはわかっていないところもあり,今後の研究いかんによって変わりうるものであることがわかっていただけたでしょうか?
分類学上の問題のところも少なからずありますが,アンモナイトがどのように進化してきたのか?それはいろんな人が興味を持っている問題だと思います.
最近ではアンモナイト亜目だけではなくて,アンキロセラス亜目の系統関係やジュラ紀以前のアンモナイト類の系統関係について研究される例が目立ってきました. 今後の研究に期待したいですね.