異常巻きアンモナイトのCT
異常巻きアンモナイトってご存じですか?普通にクルクル巻いているアンモナイトではなく,くねくねと色々な方向にねじ曲がっているアンモナイトを総称して異常巻きアンモナイトと言います.
写真のような平面(2次元)では,いったいどこがどうやって曲がっているのかなかなかわかりません,CTのような3次元ではいろいろな角度から見えてどこがどのように巻いているのかわかります.
今回はMuramotoceras sp.という異常巻きアンモナイトのCTを行うことができましたので,皆さんにご紹介します.
どうです?格好いいですよね.これはムラモトセラスをやや下からの視点にしたものです.
これはやや上からの視点です.グニュグニュと巻いているのがわかると思います.ちなみに,ここで貼り付けているのは2次元画像ですが,実際は3次元で専用のソフト(Molcerというホワイトラビット社製のフリーウェア)でグリグリとPC上で標本を回すことができます!
CTがすごいのは3次元でグリグリできるだけではありません.X線ですから,ある程度の標本であれば岩石でも透過できる点にあります.ためしに,右の画像の状態の透視図を見てみると次のような状態になります.
どうです?すごいですよね.透けて見えているのがわかりますか??もちろんこれもいろんな角度から見ることができます.
これは同じ標本を真上から見た物です.これも同じように透視画にしてみましょう.
右上の画像の透視図です.この画像には内部が観察できるからこそのパーツが写っています.
アンモナイトというのはオウムガイと同じように内部が空洞のある部屋(殻室:かくしつ)で仕切られています.このCTの透視図で見ると,ちゃんと仕切り(隔壁)と部屋(殻室)が認識できます.
こういう隔壁などは通常は切断しないとわからないのですが,さすがはCT.非破壊できちんと内部まで観察できます.
ちなみに,このCT画像,ある一部分の切断面を作ることもできるのです.例えば右の画像の切断面を作るとすると・・・
この通り,ちゃんと断面を見ることが可能です.
このCT断面図は別の角度でも難なく可能です.このように横から見た場合でも・・・
ほら,この通り.いやー,CTってスゴイですね.
今回はアンモナイトでのCTをご紹介しましたが,これは研究でも威力を発揮しますね.解像度の点では電子顕微鏡の方が高いですが,CTは非破壊で内部を観察できるという点で,研究への応用力が桁違いにある気がしています.
今回はソフト上の画面をキャプチャしたのみで,皆さんがこの異常巻きアンモナイトをグリグリできるわけではありません.それではつまらないと思うので,近々元データをUPして,皆さんも直にこの3Dグリグリの世界を堪能してもらいたいと思います.
なお,今回ご紹介するCT画像のスキャンや解析はホワイトラビットさんが行ってくれました.厚く感謝申し上げます.
また,今回CTスキャンした標本はMuramotoceras sp.(ムラモトセラス)という異常巻きアンモナイトです.この標本は私が採集したものではなく,北海道のアマチュアの方が採集・クリーニングしたものを,ご厚意で下さった標本です.おかげさまで迫力あるCT画像を得ることができました.ありがとうございました.