御所浦周辺姫浦層群・弥勒層群巡検
はじめに
2004年1月に九州御所浦町で古生物学会例会が開催された.この学会に付随して,2つの巡検が行われた.御所浦層群を中心としたものと,姫浦層群を中心としたものの2つである.
私は姫浦層群を中心とした巡検に参加したので,その簡単な概要を紹介します.
※なお,御所浦島は化石の豊富な島として有名ですが,勝手な化石採集は禁止されています.しかし,御所浦町白亜紀資料館に話を通せば,誰でも簡単に化石採集ができます.ハンマーや採集袋の貸し出し,化石採集地の案内などもありますので,ぜひ御所浦町白亜紀資料館に寄ってください.
姫浦層群 白亜紀の海成層
2004年1月26日月曜日
朝8時30分に御所浦白亜紀資料館に集合し,いざ出発!ここ,御所浦では海上タクシーが庶民の足だ.我々も2隻の海上タクシーに分乗して出発.
今回の巡検では,本当は椚島(くぐしま)にいく予定だったが,潮の関係で天草上島の和田の鼻にいくことになった.
ぞろぞろと化石めがけて歩く. ここには姫浦層群下部亜層群樋之島層が露出しており,白亜紀の海生貝類が採集できる.アンモナイトなんかも採集できる. 私も不完全な異常巻きアンモナイトを採集した.
和田の鼻を含む上島東海岸は姫浦層群樋之島層の模式地に指定されている. この下位には,姫浦層群の基底の礫岩が観察できるが,今回は樋之島層下部の上部層を観察した.基本的には,泥岩主体で,頻繁にタービダイト起源と考えられる砂岩を挟む. ここでは,Acila,Nucula, Glychymerisなどが産する.
ついつい夢中に化石採集をした. 今回の巡検ではひさびさに純粋に化石採集を楽しませてもらった. ほかの参加者も夢中のようだ.
これも和田の鼻の露頭. 典型的な砂泥互層だ.
船での移動中に見た肥後変成岩.いわゆる領家帯である. この肥後変成岩は姫浦層群,御所浦層群の下位に存在している. 姫浦層群との関係は,御所浦島内では断層,不整合で接している.
古第三系 弥勒層群
さて,つづいて白亜系姫浦層群を後にして,古第三系へと向かいました. ここは弥勒層群赤崎層と千巌山層(ms)が露出する千巌山. 案内人の一人で白亜紀資料館友の会会長の大塚先生が説明してくれた.
赤崎層を構成する赤色砂岩. 赤というより赤茶色. 時代は古第三紀始新世(約5000万年前). 当時の酸化鉄などが現在はヘマタイトになっている. 当時の古土壌の地層である.つまり陸成層です.この古土壌はバーティクゾルと呼ばれており,乾燥と雨期が繰り返してできたと考えられている.
赤崎層の上位にある千巌山層(ms). これも始新世の地層である. ここからはキバウミニナなどがでる. 主に汽水生の貝類が産出する.マングローブなどに生息しているような種類の化石がでるらしい.
キバウミニナのベッド. このキバウミニナのベッドはわずかに薄いレイヤーに密集している. なかなか見つからなかったが,ついに発見.
これがキバウミニナ.すぐに壊れてしまうので,ブロックで採集. 写真中央やや右に写っている線が殻の模様. そのうちクリーニングしたらUPします.
キバウミニナのベッドは一休み. 千厳山層は何層準かの石灰岩層が挟まれている.その石灰岩層の中には,ツリテラと呼ばれる巻き貝が入っている.
これがその巻き貝.うじゃうじゃと密集している.
その断面.巻き貝の断面というのはかなりきれいなもんだ.
白亜系と古第三系の不整合
再び場所を移動.今度は御所浦島北の横浦島に上陸. 小学校のプールの脇に姫浦層群と弥勒層群との不整合が観察できる.
これがその露頭. 下の方が姫浦層群で,その上位に弥勒層群が不整合で覆っている様子がわかる.
再び古第三系へ
同じ横浦島の赤崎層. ここは礫岩が堆積している. 千厳山の赤崎層と同じように赤色. ここからはほ乳類の化石が見つかっているとのこと.
これが横浦島の赤崎層の礫岩.
あっという間に巡検終了.
どうしても船での移動に時間がとられてしまい,露頭で十分な時間がとれなかったが,それでも姫浦層群/弥勒層群の関係がわかったので満足.
久々に純粋に化石採集も楽しめたし.
案内の大塚先生(白亜紀資料館友の会会長),菊池さん(同資料館学芸員(当時)),お疲れさまでした&ありがとうございました.