オウムガイの解剖−古生物の部屋

オウムガイの解剖

共同制作者:吉岡由紀さん

ついに研究室にきたオウムガイがお亡くなりになった.そこで,このオウムガイを今後の研究のために解剖することになった.

ここでは,その解剖の様子をお伝えしたい.

右は,今回その材料であるオウムガイ.死後アルコールに漬かっていた.

殻から軟体部を取ったところ.意外と変な形だね.体部の後ろは外套膜ですっぽり覆われているので,これを取り去ってみましょう.

一番右(後ろ)にぴにょって棒が出ているのがわかりますか?これは体管につながるところです.

外套膜を取り去ったところ.

腎臓や中腸線,鰓,消化盲嚢と呼ばれる器官が顔を出しました.

後ろから見たところ.

これも後ろから見たところ.ひだひだになっているところが消化盲嚢と呼ばれるところ.

鰓を開いてみる.鰓は左右に2対,合計4つあるのがわかりますか?イカやタコはこれが1対しかないのです.

鰓をどけるとその下には肛門が出てきました.

鰓の拡大です.このヒダヒダ!!

ところで,鰓で何してるんだ?海水から酸素を取り込んでいるのだな.

消化管を開いたところ.下は胃袋だが,消化管の方が大きい!

これが胃袋.胃袋の中にはヒダヒダが出現した.これで栄養を摂取するのですね.

これが体管につながるところですね.

口周りです.顎器(カラストンビ)と呼ばれる器官と歯舌と呼ばれる器官でご飯を食べます.

これは歯舌の拡大写真.

大根おろしみたいですよね.

つまり,顎器でえさを切り取り,歯舌で細かくすりおろす!って感じかな?

これも歯舌.ちなみに歯舌は鮫の歯みたいにどんどん作られてくる.人間も歯がどんどん作られると便利なのにね.

目です.なんかにらまれているみたいで怖い・・・.

なんじゃこりゃ?

目の横になんか変なものがついている.

なんじゃこりゃを拡大したもの.

なんだかさっぱりわかりませんね.

マイ目薬でしょうか・・・・・?

(追記)※この正体がわかりました.一番下をご覧下さい.

目を半分に割ったところ.オウムガイの目はピンホール・アイと呼ばれていて,外に1点の穴が空いていて,そこを通った光が黒い網膜に写って像が形成されるのです.

目の拡大.なかなかりっぱなつくりですね.

以上で解剖おしまい.

頭足類は軟体動物を研究する上で非常に重要で,特にオウムガイはシルル紀頃からほとんど姿形を変えていない「生きた化石」としても有名で,アンモナイト研究などにも役に立ちます.

今後の研究成果に期待しましょう.

それと,今回亡くなられたオウムガイにはご冥福をお祈りします.感謝です.

(追記)

※目の横についているなんじゃこりゃ?の正体が分かりました.共同制作者の吉岡さんが調べてくれたのですが,なんと触手でした.英語でpreocular tentacleといい,眼前方の触手です.眼の後方にも同じように触手があるそうです(こちらはpostocular tentacle,眼後方の触手).

2003年11月14日に判明.